独占禁止法と日医基準 †独占禁止法 †物の売買、サービスの売買など、商取引における価格の決定は、売り手と買い手との間の取引の場で決まり、自由な競争によって、品質が良くなり価格が下がる、あるいは適正な価格で取引がなされるようにする、これが自由主義経済の基本原則の一つです。市場を独占して価格をつり上げたり、カルテルを結んだり、元売り業者が小売りでの価格を高値に維持させる、などといった、商取引における自由で公正な競争を妨げる行為を禁止する法律が独占禁止法 ( 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 ) です。
ですから、電気製品などの価格は、希望小売価格、とか、店頭標準価格、などが示されている商品もありますが、店同士の間で、同じ製品で価格が異なる状態になっています。 ある市場では、価格を一定に保って市場、業界を保護している、こういう特殊な事例があり、代表が書籍、新聞です ( 再販売価格維持制度 )。それらとならんで、政府が政策として行う社会保障、このサービスの価格も統制価格であり、全国一律、どの医療機関でも同じ価格です。公共の福祉が自由な市場競争よりも重要なところでは、独占禁止法の外にあるのです。 自由診療と独占禁止法 †社会保険での医療 ( 健康保険と労災保険 ) 以外の自由診療では、統制された価格というものはありません。交通事故の診療においても、医療の値段は医療機関で自由に決めてよいのが原則です。 損保会社や損害保険協会、損害保険料率算出機構、医療機関側では医師会が、交通事故診療の価格はこれに決まっているから、などと医療機関に価格を押し付けてくる事例があります。価格交渉ならともかく、あたかも公定価格であるかのように振りかざす、こういう事例は、独占禁止法を顧みればおかしいものです。 統制価格の必要性 †しかし、自由診療だからといって、むやみに高い価格を付けた場合、加害者や損保会社はそんなに払えない、患者さんはそんな値段では医療サービスを買えない、といった事例が起こり、医療の現場では混乱が生じます。医療は商品と異なり、高ければ買わずに我慢する、ということがないサービスであるからでもあります。 医療機関が多数密集している地域で、値段とサービスの品質を見比べて、医療サービスを選んで買えるような、公正な自由主義経済の医療市場があれば、話は別ですが、そういうものは自由主義経済の雄、米国にもありません。
よって、社会保障での医療と同じように、医療の価格には統制が必要だ、という考え方があります。また損保業界と政府は、医療の価格を統制したいという希望を持っています。
反対に、医療機関側としては、諸外国に較べて不当に低く抑えられている健康保険診療と同じレベルの統制価格は、受け入れ難いものがあります。 そして、独占禁止法の原則があります。 紳士協定の価格 = 日医基準 ( 日医新基準 ) †そこで、平成元年、日本医師会、損害保険協会、旧自動車保険料率算定会 ( 旧自算会、現損害保険料率算出機構 ) の三者で、交通事故診療における価格の目安、というものを作り、これでよければこの「価格表」を医療機関が使ってもいいですよ、という紳士協定を口約束で結びました。 それが日医基準 ( または日医新基準とも呼ぶ ) というものです。 この基準 ( いわば価格表 ) を採用する、しないは医療機関の自由、という原則と、その紳士協定は文面では残されない、という原則があります。独占禁止法があるからです。文面で残す協定を結んだら、カルテルになるのです。 損保会社は、ほとんどの場合、日医基準での医療費の請求で自賠責限度額以内であれば、支払いを渋ることはないはずです。この紳士協定と自賠責保険のノーロス・ノープロフィットの原則があるからです。 各都道府県医師会では、加入している医師が日医基準を採用するように、アドバイスをする、というスタンスのはずです。日医基準を使うように指導するとしましたら、独占禁止法が立ちはだかります。そうして、岡山県と山梨県を残して、各都道府県医師会では、その会員のほとんどが日医基準を採用する、という状態が出来上がるに至りました。繰り返しますが、独占禁止法の建前上、加入している会員が日医基準を使うように制度化しているという医師会はないはずです。 こうして、自由診療であるはずの交通事故の医療においても、いうなれば社会保障と同じように統制価格が敷かれる状態となりました。各都道府県医師会には自賠責担当の部門や理事がいて、医療機関が日医基準で医療費を請求するようにしていれば、損保会社と医療機関との間で医療費の請求、支払いでトラブルになった場合、仲裁に入ってくれるでしょう。 法制度上の自賠責医療の費用 †法制度上は、平成 13 年の国土交通省と金融庁連名の告示第 1 号というものが基準です。
日医基準 †上記、政府の考え方に準じ、労災保険での診療報酬の額を元に、
となっています。 労災保険準拠ですから、労災保険の様々な制約が、ほとんどそのまま準用されます。 参考 † |