自費の手続き

交通事故被害者の診療は、患者さんが医療費全額を医療機関に直接支払う事、すなわち自費診療が原則です。その費用を損害賠償として加害者にどのように請求するか、どういう手続きを取るかは患者さん次第なのです。

実務上、自費診療のその費用を誰がどう支払うかで、

  • まったく患者さんの自費
  • 加害者払い
  • 自賠法 15 条請求
  • 自賠法 16 条請求
  • 自賠法 16 条請求における支払い指図書
  • 任意一括 ( 任意保険の損保会社による一括払い )

以上のどれかが行われます。

まったく患者さんの自費

現実には、自賠責保険や任意保険を一切使わずにこの手続きが使われる事は大変少ないです。

被害者が加害者に強い恨みを持って、加害者を損害賠償訴訟で追いつめたい、といった場合に使われた事例があります。

加害者払い

加害者が医療機関の窓口で、患者さんに代わって医療費全額を支払う事です。患者さんの受診のたびに毎回加害者もついて来る、といった事例もあります。あるいは月末にまとめて加害者が支払う、ということもあります。

タクシー会社がよくこの方法を使います。タクシー会社が自社運行する車両で保険を使った場合、保険の掛け金が高くなるという事態を防ぐために、少額の損害賠償で済むような場合には会社が全額かぶる、というような事例があります。

自賠法 15 条請求

加害者請求と呼ばれる手続きです。自賠責の損保会社に支払いを請求する者が加害者である、という事です。

医療機関は被害者、すなわち患者さんに医療費を請求して支払ってもらい、患者さんは加害者に損害賠償として医療費を請求して支払ってもらい、加害者は自賠責の損保会社にその費用を支払ってもらう、という手続きです。

 医療機関
  ↓
  ↓医療費請求
  ↓
 被害者
  ↓
  ↓損害賠償請求
  ↓
 加害者
  ↓
  ↓保険金請求
  ↓
 自賠責の損保会社

自賠法 16 条請求

被害者請求と呼ばれる手続きです。自賠責の損保会社に支払いを請求する者が被害者である、という事です。

医療機関は被害者、すなわち患者さんに医療費を請求して支払ってもらい、患者さんは自賠責の損保会社にその費用を支払ってもらう、という手続きです。

 医療機関
  ↓
  ↓医療費請求
  ↓
 被害者
  ↓
  ↓保険金請求
  ↓
 自賠責の損保会社

自賠法 16 条請求における支払い指図書

上記の自賠法 16 条の請求手続きにおいて、被害者が加害者の損保会社に支払い指図書という書面を出して、医療機関に直接自賠責の損保会社から医療費が支払われるようにする手続きです。

慰謝料や休業補償など、医療費以外の部分については、自賠責の損保会社から被害者に支払われるようになります。

すなわち、損害賠償金をどのように支払うかを、被害者が自賠責の損保会社に指示する、という手続きです。

                 医療機関
                  ↓
                  ↓医療費請求
                  ↓
       被害者        ↓
       ↓ ↓        ↓
       ↓ ↓慰謝料請求   ↓
 支払い指図書↓ ↓休業補償請求  ↓
       ↓ ↓など      ↓
       ↓ ↓        ↓
      自 賠 責 の 損 保 会 社

任意一括 ( 任意保険の損保会社による一括払い )

以上のややこしい手続きを省略し、加害者、被害者の利便を図る方法が、任意保険の損害保険会社による一括払い ( 任意一括 ) という方法です。

巷間ではこの任意一括の方法が当たり前のように行われていて、被害者 ( 患者さん ) は、医療費を払う必要がないと錯覚していますが、医療機関に対する支払いの義務を負うのは患者さんです。健康保険や労災保険によらない診療は、通常の商行為と同じです。

 医療機関
  ↓
  ↓医療費請求
  ↓
 任意保険の損保会社
  ↓
  ↓保険金請求
  ↓
 自賠責の損保会社

この任意一括は、法令に定めのない手続きで、医療機関、被害者、加害者、任意保険の損保会社、自賠責の損保会社、これらの間での合意による紳士協定として行われます ( 契約ではない ) 。

よく誤解されますが、医療機関には、損保会社 ( 自賠責、任意保険 ) に対して金銭を請求する権利は、法的にはありません。任意一括では、これからの医療費を患者さんに代わって任意保険の損保会社が支払いますよ、という任意保険の損保会社の口約束のようなもの、すなわち紳士協定です。

ここでいう契約とは、支払う金額が確定していること、誰が誰に対し何円を支払うという契約が行われる、という関係の事です。医療のように、これから医療が行われ、将来の支払い金額が確定しないもの ( 医療は準委任契約 ) では、これからの分を支払いますよと任意保険の損保会社が言っても単なる口約束でしかないのです。

医療費は過去の分についてしか確定しません。医療は、通常、請負契約のように、何円でどういう仕事を請け負う、というものではないのです。医療費の過去の分について、いついつの医療費何円を支払う、という契約を医療機関と損保会社で取り交わした場合に、その契約が履行されなければ、そこで初めて、医療費を支払えと損保会社に迫ることができるようになります。

紳士協定ですから、一方的に破棄しても法的に何の咎めもありません。任意保険の損保会社は、( 任意保険ですが ) 自賠責の賠償の上限額を越える支払いを拒否することが有り得ます ( よく見聞きします )。

任意保険の損保会社は、加害者の代理人であること、営利企業であることを忘れないでください ( 患者さんは、相手側の任意保険の損保会社を自分の味方だとよく勘違いされます )。


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2008-09-10 (水) 13:43:10 (3355d)