研修医、大学院生の労働者性

  • 研修医が労働者であることは、2005 年 6 月 3 日の最高裁判決 ( 過労死関西医大研修医未払賃金訴訟 ) によって確立されました。
  • 大学院生の労働者性が、次の問題となっています ( 交通事故死鳥取大学大学院生損害賠償訴訟 2006 年鳥取地裁 )。
  • 臨床系の医学部の大学院生が大学附属病院で診療行為を行った場合に、労働者性があるかどうかを規定した法令や通達、政府機関の見解または判例などは、現在の所、ありません。
  • 看護婦養成所の学生の労働者性に関する解釈の文書 ( 基発648号、昭和24年6月24日 ) では、看護学生が労働者とみなされる場合とは、教習および教習の場所に関係ない作業、事務、その他雑用に使用される、または、生徒の実習と一般看護婦の労働が明確に区別されていない場合としています。

大学院生が、大学附属病院で使用者の指揮に従属する関係にある、一般の医師と同様の診療に従事している、または大学院教育とは離れた大学附属病院での作業、事務、雑務をこなさなければならない状態にあれば、労働者性が、幾ばくかでも、あり得ると考えることができるでしょう。

賃金が支払われていないという労働者の定義の一部を欠いている以外、労働者といえるのではないでしょうか。

労働者性があるかどうかは、診療 ( 労働 ) における安全や衛生の確保、大学院生が行った診療行為に関連した事故の責任の所在、大学院生の健康や安全の管理の義務を負う者が誰かなどの問題に関わってきます。

労働基準法

第九条(定義)

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働組合法

第三条(労働者)

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。

民法

第八節 雇用 第六二三条(雇用)

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

看護婦養成所の生徒

昭二四・六・二四 基発第六四八号、昭二五・一一・一 婦発第二九一号、平九・九・二五 基発第六四八号

保健婦助産婦看護婦法(昭和二三年法律第二〇三号)に基づく看護婦養成所の生徒は、生来看護婦となるべき素養を取得するために教育を受けているものであり、その教習課程中の実習も教育の目的でのみなされるべきものであるから、その生徒は原則として労働者とみなすべきではない。なお、従来の慣習により生徒を一般看護婦と同様に勤務させている場合があり、たとえ形式的にいわゆる生徒と称して実習に従事していても、その実態においては、労働基準法第九条にいう労働者とみなされる場合があるが、次のいずれにも該当する場合を除き、当該事業経営者と生徒との間には実質的な使用従属関係が存在するものと認められ法を適用すべきものであるから、その労働の実態を調査し法の適用について十分留意されたい。

本件は養成中の男性たる看護人についても同様に取り扱われたい。

(一) 実習時間外はもとより、実習中といえども、教習及び教習の場所に関係のない作業、事務、その他雑用に使用されないこと。

(二) 生徒の管理については、責任者が定められ、生徒の実習と一般看護婦の労働が明確に区別されていること。

(昭二四・六・二四 基発第六四八号、昭二五・一一・一 婦発第二九一号、平九・九・二五 基発第六四八号)

労働基準法の「労働者」の判断基準について

労働基準法研究会第1部会報告(労働契約関係)昭和60年12月19日

労働者の判断基準について

l、労働基準法第9条は、その適用対象である「労働者」を「・・・・・使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と規定している.これによれは、「労働者」であるか否か、すなわち「労働者性」の有無は「使用される=指揮監督下の労働」という労務提供の形態及び「賃金支払」という報酬の労務に対する対償性、すなわち報酬が提供された労務に対するものであるかどうかということによって判断されることとなる。
この二つの基準を総称して、「使用従属性」と呼ぶこととする。

2、しかしながら、現実には、指揮監督の程度及び態様の多様性、報酬の性格の不明確さ等から、具体的事例では、「指揮監督下の労働」であるか、「貸金支払」が行われているかということが明確性を欠き、これらの基準によって「労働者性」の判断をすることが困難な場合がある。このような限界的事例については、「使用従属性」の有無、すなわち「指揮監督下の労働」であるか、「報酬が賃金として支払われている」かどうかを判断するに当たり、「専属度」、「収入額」等の諸要素をも考慮して、総合判斬することによって「労働者性」の有無を判断せざるを得ないものと考える。

この中からピックアップしまして、以下のようなものが労働者性の要素となる様です。大学院生も、これに当てはまる所が多いと思われます。

  • 具体的な仕事の依頼、業務従事の指示等に対して拒否する自由を有しない。
  • 業務の内容及び遂行方法について「使用者」の具体的な指揮命令を受けている。
  • 「使用者」の命令、依頼等により通常予定されている業務以外の業務に従事することがある。
  • 勤務場所及び勤務時間が指定され、管理されていること。
  • 本人に代わって他の者が労務を提供することが認められていない、また、本人が自らの判斬によって補助者を使うことが認められていない等、労務提供に代替性が認められていないこと。
  • 他社の業務に従事することか制度上制約され、また、時間的余裕がなく事実上困難である場合。

賃金 0 の労働者

賃金が 0 の研修生は労働者とは認められないのが原則の様ですが、賃金が 0 円であっても他に何らかの報酬に相当するものがある場合はそれを賃金と等価として労働者性を認めることもある様です。

参考


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Last-modified: 2009-11-23 (月) 00:54:58 (2918d)