医療の業界で、独占禁止法 ( 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 ) に触れる事例は、医師会による開業規制に端的な例を見ることができますが、医師が団体として行動するときに細かい注意が必要です。

反対に、薬剤、医療材料の価格について、業界横並びの価格に注意することも重要でしょう。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 ( 抄 : 参照条文 )

昭和二十二年四月十四日法律第五十四号

第二条 ( 定義 )
2 この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。

一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団

二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団

三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体

第八条 ( 事業者団体の禁止行為、届出義務 )
事業者団体は、次の各号の一に該当する行為をしてはならない。

一 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。

四 構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動を制限すること。

第四十八( 違反者に対する措置の勧告、勧告審決 )
条公正取引委員会は、第三条〔私的独占又は不当な取引制限の禁止〕、第六条〔特定の国際的協定又は契約の禁止〕、第八条〔事業者団体の禁止行為〕、第九条第一項、第二項、第五項若しくは第六項、第十条、第十一条第一項、第十三条、第十四条、第十五条第一項、第十五条の二第一項、第十六条第一項、第十七条又は第十九条 ( 不公正な取引方法の禁止 ) の規定に違反する行為があると認める場合には、当該違反行為をしているもの(当該違反行為が第八条に係るものであるときは、当該事業者団体の役員及び管理人並びにその構成事業者を含む。)に対し、適当な措置をとるべきことを勧告することができる。
3 前二項の規定による勧告を受けたものは、遅滞なく公正取引委員会に対し、当該勧告を応諾するかしないかを通知しなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による勧告を受けたものが当該勧告を応諾したときは、公正取引委員会は、審判手続を経ないで当該勧告と同趣旨の審決をすることができる。

医師会の活動に関する独占禁止法上の指針

昭和 56 年 8 月 7 日

公正取引委員会事務局

医師会、特に地区医師会の活動については、いわゆる医療機関の適正配置に関する活動等に関し、独占禁止法違反とされた事例もあり、当委員会は、医師会の活動に関してアンケート調査を実施し、その実態の把握に努めたのを機に、今般、医師会の活動と独占禁止法との関係についての考え方を、活動指針として取りまとめた。この活動指針は、医師会の諸活動に対する独占禁止法の適用について当委員会の考え方を参考例を挙げつつ、具体的に明らかにすることにより、同法に抵触することとなる活動を未然に防止しようとするものである。

なお、医師会の具体的な活動が、独占禁止法に抵触するおそれがあるか否かについては個々の事案ごとに判断を要する場合も多いと考えられるので、かかる場合には、当委員会に設けられた一般相談、あるいは、事前相談制度により個別の相談に応じることとした。

1 新規開業等の制限に関する行為

(1) 考え方

新規開業をしようとする医師が、医師会に入会を希望している場合に、医師会が、これを拒否して新規開業を不当に制限したり、会員の分院の設置、増床等についてこれを不当に制限することは、原則として違反となる。しかしながら、他の医療機関の活動状況等に関する情報を提供したり、合理的な範囲内の助言をすることは、原則として違反とならない。

(2) 参考例

違反となるかどうかを判断するため参考となる類型を以下に例示する(なお、各項末尾の( )内は、主な関係条文を示すもので、例えば、§8—1—1とあるのは独占禁止法第八条第一項第一号の略)。

○原則として違反となるもの
1—1 新規開業をしようとする者に対して、規約、内規等により特定地域における医療機関の数の限定、距離制限その他の基準を設け、その開業を不当に制限すること(§8—1—3)。
1—2 新規開業をしようとする者に対して、その近隣の既設の医療機関の開設者等との間の調整を行い、調整にしたがわない場合には、新規開業をしようとする者の入会を認めないこと(§8—1—3)。
1—3 会員の分院の設置、増床等について特定地域における医療機関又は病床の数の限定、距離制限等の方法により分院の設置、増床等を不当に制限すること(§8—1—4)。
1—4 新規開業の制限を目的又は効果としてもつ高額な入会金、負担金等を徴収すること(§8—1—3)。
○違反となるおそれがあるもの
1—5 入会希望者の入会申請手続上、近隣の会員等の推せん等を要求すること。
なお、その運用上、1—1又は1—2と同様の効果をもつと認められる場合には、原則として違反となる(§8—1—3)。
1—6 医療機関の開設希望場所を他所にするよう要請し、又は、代替地を斡旋すること。
なお、要請や斡旋の範囲をこえて、事実上強制することとなる場合には、原則として違反となる(§8—1—3)。
1—7 医療機関の標榜診療科目を調整すること。
なお、近隣の医療機関の標榜する診療科目と重複することをさける目的で合理性のない調整を行う場合には、原則として違反となる(§8—1—3)。
1—8 社会通念上合理性のない高額の入会金、負担金等を徴収すること。
なお、1—4と同様の効果をもつと認められる場合には、原則として違反となる(§8—1—3)。
○原則として違反とならないもの
1—9 新規開業をしようとする者に対して相談に応じ、他の医療機関の分布状況、地域の特性、人口分布等についての情報を提供するなど、合理的な範囲内において助言すること。
1—10 医療機関の分布状況等を含め、適正な医療の供給について調査、研究、啓蒙等を行うこと。
1—11 社会通念上合理的な範囲内の入会金や合理的な計算根拠に基づいた負担金等を徴収すること。

2 医療機関の事業活動に対する不当な妨害に関する行為等

(1) 考え方

医師会が、団体として会員又は非会員が開設している特定の医療機関の事業活動に対して、不当な差別的取扱いをしたり、不当な圧力を加える場合には、原則として違反となる。

(2) 参考例

○原則として違反となるもの
2—1 会員又は非会員の行政機関等からの委託事業の受託について、これを不当に妨害すること(§8—1—3、§8—1—4)。
2—2 優生保護医の指定に際して、非会員を合理的な理由なく差別的に取り扱うこと(§8—1—3)。
2—3 健康保険医療機関等の指定について、非会員が指定を受けることを不当に妨害すること(§8—1—3)。
2—4 医薬品、医療設備等の共同購入、その他の共同事業を行う場合に、会員にその利用を強制し、又は、その利用について特定の会員を不当に差別的に取り扱うこと(§8—1—4)。
2—5 医薬品、医療設備等の供給者に対して、特定の会員又は非会員に販売しないよう不当に圧力を加えること(§8—1—5)。

3 自由診療料金表及び文書料金表の作成に関する行為

(1) 考え方

自由診療料金や文書料金を医師会が決定している場合には、原則として違反となる。また、標準料金等会員の料金設定の基準となるものを決定している場合にも、原則として違反となる。

(2) 参考例

○原則として違反となるもの
3—1 自由診療料金や文書料金を医師会で決定すること(§8—1—1、§8—1—4)。
3—2 自由診療標準料金や文書標準料金等会員の料金設定の基準となるものを決定すること(§8—1—1、§8—1—4)。
○違反となるおそれのあるもの
3—3 共通の料金設定に役立つ、作業量、技術的難易度等に関する指標等を決定すること。
なお、指標の単価等を決定することにより3—1又は3—2と同様の効果をもつと認められる場合には、原則として違反となる(§8—1—1、§8—1—4)。
○原則として違反とならないもの
3—4 医薬品、医療設備等の価格に関する、公正かつ客観的な比較資料を会員に提供すること。
3—5 個々の会員にそれぞれの料金表を提示するよう指導し、又は、合理的な範囲内でその料金表の様式を統一すること。

4 診療時間及び広告に関する行為

(1) 考え方

医師会のなかには、診療時間について取り決めたり、広告について医療法による規制以上の制限を行っている場合があるが、診療時間については、合理的な範囲内のものであって、その遵守を強制しないものであれば、原則として違反とはならないし、広告に関する上記制限についても同様と考えられる。

(2) 参考例

○違反となるおそれがあるもの
4—1 診療時間の制限を定めること。
なお、制限の内容が合理的でない場合やその遵守を強制する場合には、原則として違反となる(§8—1—4)。
4—2 広告宣伝について制限を行うこと。
なお、上記制限の内容が合理的でない場合やその遵守を強制する場合には、原則として違反となる(§8—1—4)。
○原則として違反とならないもの
4—3 緊急当番医制を実施し、又は、実施しようとする場合において緊急当番医の診療時間を定めること。
4—4 医師の健康の保持や従業員対策上の配慮から、会員にその遵守を強制しない診療時間の目安を定めること。

裁判例

東京高裁 1984.5.30

足立江北医師会設立不許可処分取消請求事件

S59. 5.30 東京高裁 昭和 55 行コ 40

主文 ( 抜粋 )

被控訴人が控訴人に対し昭和五〇年九月二五日付でした社団法人足立江北医師会の設立を許可しないとの処分を取り消す。

事実

独占禁止法違反行為について

控訴人の会員は、過去六年間にわたり足立区長に対し、予防接種委託契約や老人無料検診委託契約等の締結を申込んでいるが、足立区長はこれに応じないでいる。足立区医師会は控訴人の会員らと右契約を締結すれば、足立区医師会は地域医療に協力することはできない、と公言しており、東京都医師会は控訴人の社団法人設立許可に反対し、足立区が控訴人の会員らとの間で右委託契約を締結することを妨害している。東京都医師会及び足立区医師会が控訴人の社団法人設立許可に反対するのはまさに足立区の地域医療業務を不当に独占しようとするためである。このような東京都医師会及び足立区医師会の行為は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、独占禁止法という。)二条六項、八条一項一号に違反するものである。被控訴人は本件処分をするにつき、東京都医師会及び足立区医師会の控訴人の社団法人設立許可に反対である旨の意見を考慮し、右意見を根拠として本件処分をしたのであるが、これは東京都医師会及び足立区医師会の独占禁止法違反行為を容認助長するものであつて、違法というべきである。

富山地裁 2007.8.29

知事の中止勧告取り消す 徳洲会病院開設で富山地裁

日医デイリーニュース 共同通信

系列病院の新規開設をめぐり、富山県知事から中止勧告を受けた医療法人徳洲会(大阪市)側が、勧告の取り消しを求めた訴訟の差し戻し審判決で、富山地裁は29日請求を認め、知事の勧告を取り消した。訴えを却下した1審、2審とは異なり、中止勧告を訴訟の対象と認めた上で、勧告は違法と判断した。

最高裁は2005年7月、行政指導の勧告でも行政処分と同様と認められる場合は訴訟の対象になるとし、審理を富山地裁に差し戻していた。

原告は申請の名義人となった徳洲会系病院の医師。

判決などによると、徳洲会は富山県高岡市に400床の病院の開設を計画し、1996年から97年まで計6回、開設許可を申請したが、県は申請書をいずれも返却。

県は97年10月、高岡医療圏の病床数が必要数に達しているとして、開設中止を勧告。県は12月、許可を出す一方で、勧告に従わない場合は保険医療機関の指定を拒否すると通知した。

同様の訴訟は茨城、香川、熊本でも起こされ、最高裁がいずれも審理を差し戻し。高松高裁は6月、差し戻し控訴審で請求を退け、熊本地裁も2月、請求を棄却した。

米国反トラスト法

米国は、司法省がマイクロソフト社を反トラスト法 ( 日本でいう独禁法 ) 違反で訴追したように、市場の私的独占の禁止に厳格です。診療ガイドラインまでも規制しようとする動きがあるそうです。

石田道彦金沢大学法学部助教授 : 米国医療制度と反トラスト法の展開 ( 日本医療情報センター ( JAMIC ) | ジャミック生涯総合医局 | 編集長のコラム 2004.11.15 )

医療政策における市場原理の導入や医療機関の企業家的活動の増大にともない、今後わが国においても医療分野における競争政策の適正な実施が重要な政策課題になるものと考えられる。その際、医療サービスの特殊性をいかに考慮するかが問題となる。米国では、医療機関や医療関係者のさまざまな活動に対して反トラスト法(独占禁止法)が適用されており、こうした適用例や裁判例を検討することは上記の課題を解決する上で有効な手がかりを提供するものと考えられる。

医療分野における米国反トラスト法の展開は、大きくみて3つの時期に分けることができる。第1は、医療分野での反トラスト法の適用が開始された時期である(1975年〜1980年代はじめ)。それまで医療分野での反トラスト法の適用に消極的であった裁判所が態度を大きく変更し、医師会など同業者団体による競争制限的行為が問題とされるようになった。第2は、政府による規制(医療計画、病床規制)と反トラスト法との関係が問題とされた時期である(1980年代)。裁判所は、医療計画に従った医療機関に対して、非常に限定された範囲で反トラスト法の適用を控えるという方向性を示した。

これに対し、現在に至る第3期は、医療機関や開業医が形成するネットワーク組織への反トラスト法の適用が問題となっている時期と位置づけることができる(1990年代〜)。

司法省と連邦取引委員会は、3度にわたり、医療領域での反トラスト法の適用方針を示したガイドラインを公表している。当初のガイドラインは、経済的リスクの共有を行う統合事業のみを容認するという姿勢を示していたが、最新のガイドラインでは、診療ガイドラインの実施など診療面での統合事業を実施するネットワーク組織に対しても反トラスト法のゆるやかな適用を行う場合があることを示しており注目される。

参考


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Last-modified: 2008-09-10 (水) 13:43:12 (3243d)