医療事故、過誤での時効について。

民事

医療事故、過誤が発生し、患者に損害を与えた場合の、医師をはじめ医療関係者が負わされる損害賠償責任の消滅時効について調べてみました。

不法行為責任

医師などが故意または過失によって患者の権利を侵害した場合

民法 709
故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス

不法行為に対する損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知ったときから 3 年で消滅する ( 民法 724 条 )。

不法行為に対する責任は、その行為のあったときから 20 年で消滅する ( 除斥期間、民法 724 条 )。

債務不履行責任

医師などが診療契約によって当然に負っている義務の履行を怠ったために患者に損害を与えた場合

民法 415 条
債務者カ其債務ノ本旨ニ従ヒタル履行ヲ為ササルトキハ債権者ハ其損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得 債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキ亦同シ

債務不履行責任による損害賠償請求権は、権利を行使すべきときから 10 年間、行使しなければ消滅する ( 民法 166、167 条 )。

  • 時効は、1. 請求、2. 差押、仮差押または仮処分、3. 承認によって中断します ( 民法 147 条 )。
  • 除斥期間は中断することがありません。
  • 患者側がいつ不法行為を知ることになったか ( 不法行為責任の時効期間がいつから始まるか ) は、実際の事例でははっきりと決めにくいことが多いようです。
    • 損害が医療過誤によるものと患者が知らなかった期間は時効は進行せず、患者が医療過誤の存在を知った時点から時効が進行します。
    • 医療行為がなされた当時には予想できなかった損害が将来発生した場合、その発生を患者側が知ったときから時効期間が始まります。
  • 承認とは、医師など医療者側が損害賠償の義務を承認することです。どういう行為をもって承認したとなるかは、実際の事例では争いになることが多いそうです。医療者側が、何か過失を認める発言をしたり、医師賠償保険に手続きを始めるように求めたりすることで、承認ととらえられる場合があるそうです。
  • 患者側が医療者側に損害賠償を求めようとして、内容証明郵便で催告することがありますが、その後 6 ヶ月以内に裁判を提起しない限り時効は中断されません ( 民法 153 条 )。
  • 医療者側は、過去のどの医療行為によって、いつ患者側から損害賠償を突きつけられるか、いつまで損害賠償を請求されるか、大変分かりにくいものです。

刑事

犯罪の疑いを持たれて、警察による捜査を受けた後、送検され、さらに検察官によって公訴がなされるかどうか決定されます。犯罪行為があった時点から公訴の時効は進行します ( 刑事訴訟法 250、253 条 )。

刑事訴訟法 250 条 2
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
  1. 死刑にあたる罪については 25 年
  2. 無期の懲役又は禁錮にあたる罪については 15 年
  3. 長期 15 年以上の懲役又は禁錮にあたる罪については 10 年
  4. 長期 15 年未満の懲役又は禁錮にあたる罪については 7 年
  5. 長期 10 年未満の懲役又は禁錮にあたる罪については 5 年
  6. 長期 5 年末満の懲役若しくは禁錮又は罰金にあたる罪については 3 年
  7. 拘留又は科料にあたる罪については 1 年

近年、医療行為において過失があったと疑われ、送検される事件が相次いでいますが、その罪、すなわち業務上過失致死傷等の罪は次のように定められています。

刑法 211 条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

参考


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Last-modified: 2012-08-15 (水) 13:29:07 (1922d)