*示談と非弁行為 [#ha3e8863]

交通事故の被害者になった時、加害者の車両が任意保険に入っていれば、たいてい、その任意保険の損保会社の社員が連絡を取ってきます。そして、その加害者側の任意保険の損保会社が、損害賠償金の額を決定して支払い、示談をまとめようとしてくれます。

任意保険の損保会社としては、加害者 ( すなわち自社の顧客 ) と被害者の間の損害賠償が、なるべく少額で済んで欲しい、加害者が最終的に自社に対して請求してくる保険金を低く抑えたい、という希望があるでしょう。

こういう交渉事を業として行うのは、基本的に、弁護士にのみ認められたもので、弁護士以外の様々な人が、示談、仲介、交渉をして不当な利益を上げること、すなわち被害者が正当な賠償を受けることができなくなることを防ごうというのが法律の趣旨です。

**新聞報道 [#z0ee728b]

***資格ないのに示談交渉 弁護士法違反で6人逮捕 ( 産經新聞 2005.7.13 ) [#v7e83685]

弁護士資格がないのに交通事故の示談交渉をしたとして、警視庁保安課などは13日までに、弁護士法違反容疑で保険調査会社「東京損害保険調査事務所」社長、藤田謙司(ふじた・けんじ)容疑者(42)=東京都目黒区八雲=と、同社の元課長ら計6人を逮捕した。

調べでは、藤田容疑者らは弁護士資格がないのに報酬を得る目的で、2002年10月から今年3月にかけ、都内の交通共済協同組合から依頼を受け、同組合に加盟する会社の従業員がかかわる交通事故をめぐり、損害賠償の示談交渉などの法律事務を行った疑い。

同社は1995年に設立された。東京弁護士会が97年8月に「非弁活動をしている」と警告。さらに今年2月、弁護士法違反にあたるとして警視庁に告発していた。

調べに対し藤田容疑者は「示談はまとめたが、報酬はもらっていない」と供述しているという。(共同)

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ではなぜ、保険会社の社員は示談までまとめてしまえるのでしょう。

社団法人日本損害保険協会と財団法人日弁連交通事故相談センターとで、覚書を交わし、保険会社のそういった営業行為を容認することになっているかららしいのです。

**覚書と確認書 [#rc461d5e]

***覚書 [#h7cb3aa2]

社団法人日本損害保険協会(以下甲という。)と日本弁護士連合会の要請を受けた財団法人日弁連交通事故相談センター(以下乙という。)とは、甲の社員である各損害保険会社(以下各社員会社という。)が家庭用自動車保険(以下新保険という。)を新たに発売するに際して、今後の任意自動車対人賠償責任保険の運用について、交通事故損害賠償をめぐる紛争当事者の正当な権利を擁護し、社会正義を実現する目的で、下記条項を相互に確認する。

第一 甲は下記1ないし4の甲または各社員会社の行なう諸施策について提案し、乙はこれに同意した。

(1)裁判所の認定基準に準ずる任意自動車対人賠償責任保険支払い基準を作成し、もって対人事故に係る保倹金または損害賠償額の支払いの適正化を期する。

(2)損害賠償額の査定、被害者との折衝等の業務を担当する職員に対しては、被害者の権利を侵すことのないように十分な指導、監督を行ない、職員の資質、能力の向上に万全を期する。

(3)交通事故損害賠償をめぐる紛争について、和解のあつ旋を目的とする中立の機関を設置する。設置の場所その他の細目について甲は乙と協議する。

(4)新保険について、対人事故に係る被保険者の負担すべき法律上の損害賠償責任の総額が確定していない場合でも、被保険者または被害者の申し出があったときは、被保険者が法律上の損害賠償貴任を負担することが明らかである金額について、保険金または損害賠償額の内払いを行ない、被保険者および被害者の交通事故による経済的負担を軽減す
る。

第二 乙は下記1ないし6を提案し、甲および各社員会社はこれに同意した。

(1)被害者の保険会社に対する直接請求権を新保険の約款上明記する。

(2)各社員会社は、新保険について「保険会社による示談代行」など弁護士法違反の疑いがある宣伝、広告活動を行なわない。

(3)各社員会社は、新保険の約款賠償責任条項第五条による被害者との折衝等の業務については、弁護士との緊密な連携のもとに、公正かつ.妥当な処理を行なう。

(4)各社員会社は、新保険の約款賠償責任条項第五条の業務については、必ず、会社の常勤の職員に担当させるものとし、代理店その他部外者に委嘱しない。また、担当職員の給与は、歩合制その他取扱件数に応した報酬制度によっては支給しない。

(5)各社員会社は、保険士その他非弁護士の交通事故への介入を防止するため、次の措置をとる。

>(1) 被害者の親族以外の者が被害者の代理人として反復して損害賠償の請求を行なった場合には、甲は各地域ごとに各社員全社の資料を整理して乙または乙の支部に通知する。

>(2) 各社員会社は、上記の請求には原則として応じない。

(6)各社員会社は、交通事故損害賠償をめぐる紛争当事者が事件について弁護士に相談し、または委任する機会を増大させるように配慮する。その方法および内容については、甲と乙が協議のうえ決定する。

第三 本覚書に記載された事項に関連する事項、その他任意自動車対人賠償責任保険に関する一切の問題を対象として、甲と乙とは、今後、定期および随時に協議を行なうものとする。

上記のとおり確認の証として、本覚書正本二通を作成し、甲・乙双方記名調印のうえ、各々その一通を保有し、各社員会社はそれぞれ副本一通を保有する。

昭和四八年九月一日

甲 社団法人 日本損害保険協会

乙 財団法人 日弁連交通事故相談センター

***確 認 書 [#l6efa24a]

社団法人日本損害保険協会(以下「甲」という。)と日本弁護士運合会の要請を受けた財団法人日弁連交通事故相談センター(以下「乙」という。)とは、甲・乙間の昭和四八年九月一日付覚書(以下「覚書」という。)に関し、下記のとおり確認する。

記

第一 甲は、甲の社員である各損害保険会社(以下「各社員会社」という。)が、今後、共同して統}の任意自動車対人賠償責任保険(以下「任意保険」という。)の支払基準を作成・維持していくことが困難な状況にある事情を説明し、乙は了解した。

第二 甲と乙は、覚書および本確認書の趣旨にのっとり任意保険に関する一切の問題を対象として、今後も定期および随時に協議を行うものとする。

上記のとおり確認の証として、本確認書二通を作成し、甲・乙双方記名調印のうえ、各々その一通を保有し、各社員会社はそれぞれ副本一通を保有する。

平成九年三月二五日

甲 社団法人 日本損害保険協会

乙 財団法人 日弁連交通事故相談センター

***編者注 [#o6a00d44]

+機種依存文字の丸の中の数字はかっこの中の数字に直した。
+インターネット上から拾って来た時から存在した誤変換らしい部分はそのままである。

**自動車損害賠償責任保険審議会答申 ( 2000.6.27 ) [#f0992412]

***金融庁ニューズレター創刊号 ( 2000.7 ) [#h6bbc727]

示談代行制度は、損害調査に係る専門的な内容の当事者への説明、交渉の迅速な解決といった点で、全体としてみれば有効に機能している。

しかしながら、示談を行う際に加害者が道義的な責任を果たさないケースや、示談提示額が低く抑えられているケースがあるとの指摘もあり、各保険会社においては、そうした問題が起きないよう、運用の改善現に努める必要がある。

>ここでも損保会社による交渉を追認しているようです。

>この答申書は、自賠責のアウトラインの理解の参考になりそうです。

[[pdf 保存 454KB:http://hcoa.jp/pdf/2000/200007kinyuu_cho.pdf]]

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