*自賠法と民法 [#b8737246]

社会保険は国の社会保障制度の一環で、国民の相互扶助によるシステムです。労災保険は労働者を守るための、これも社会保障制度の一環です。

他人に負わされたケガは、これらの社会保障制度とは考え方が異なります。ケガをさせた人が損害賠償の責を負います ( 民法第 709 条 )。

交通事故や傷害事件など、他人に負わされたケガは、個人同士の間での損害賠償の関係となり、損害の賠償は金銭でなされます。よって、ケガを負った被害者はケガの治療費 ( 休業保障や慰謝料を含め ) を加害者側に請求し、治療費は自分で支払うのが原則です ( 自費診療 )。

交通事故の場合、被害者が多い上に、年々事故件数が急増したため、被害者を第一義に救済する制度ができました。それが自賠責 ( 自動車損害賠償保険 ) です。

これは自動車損害賠償保障法 ( 自賠法 : 1955 年制定 ) による制度です。自賠法は民法の特別法として、民法の損害賠償の規定に優先して適用されますので、交通事故に遭ってけがをしたら、自賠責保険で補償される ( 医療を受ける ) ことになります。

自賠責保険は、被害者の過失がよほど大きくない限りは、民法と異なって、過失相殺されません。これも被害者救済が第一義である制度だからです。

自賠責保険が強制保険であることもそうです。

また、加害者が分からないひき逃げ事件でも、自賠責保険は被害を補償します ( 自賠責の政府補償事業 )

通常、交通事故により怪我を負った患者さんの診療に関する手続きは、民法と自賠法から始まります。以下に要点を抜粋してみました。

**民法 第 709 条 [#y67882d9]

>故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ。

これで、原則的に、交通事故の加害者が被害者の治療費を負担するなど、損害を賠償しなければならないということが定められています。もちろん、過失割合が勘案されますが。

**民法 第 416 条 [#id0399c1]

ここでは、どういう損害に対して損害賠償をしなければならないかを定めています。交通事故にはこの条文を類推適用することとされています。

" 通常生ずべき損害" を賠償することが第一項で定められています。

第二項では、" 特別の事情による損害 " については予見可能性がある場合に限って賠償する事と定められています。

:第一項|損害賠償ノ請求ハ債務ノ不履行ニ困りテ通常生スヘキ損害ノ賠償ヲ為サシムルヲ以テ其目的トス
:第二項|特別ノ事情ニ困りテ生シタル損害ト雖モ当事者力其事情ヲ予見シ又ハ予見スルコトヲ得ヘリカリシトキハ債務者ハ其賠償ヲ請求スルコトヲ得

予見可能な損害であるかの判断は、加害者の不法行為との間に " 相当の因果関係 " が認められることによります。すなわち、その行為がなければその損害が生じなかったであろうと認められること、その様な行為があれば、通常はその様な損害が生じるであろうと認められることが必要です。これは社会通念上または科学的に見て合理的なものでなければなりません。

**自動車損害賠償保障法 第 3 条 [#p8d90b42]

>自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。
>ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

自動車損害賠償保障法は民法の特別法で、民法に優先して適用されます。自賠法では、賠償責任を負うのは運行供用者です。

また、不法行為の立証責任について、民法とは相違があります。民法では加害者に故意または過失があったことを被害者が立証しなければなりませんが、自賠法では、被害者に立証責任はありません。

この法律で、自動車による人身事故の被害者を救済しているのです。

**参考 [#idc88a2c]

-[[自動車損害賠償保障法:http://www.houko.com/00/01/S30/097.HTM]]

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