*混合診療について [#w440d05e]

日本の医療は世界第 1 位、アメリカの医療は世界 17 位と、日本の医療は海外から高い評価を得ている。この世界がうらやむ日本の医療は、昭和 36 年に設定された国民皆保険制度によって成り立っている。つまり国民皆保険制度によって日本国民は誰でも平等に、低額で最高の医療を受けているのである。我が国の医学が世界的に優れているわけではないが、この国民皆保険制度によって医療は世界第 1 位を堅持している。しかしバブル崩壊後の財政難から、医療を経済と連動させる政策により、国民医療費はこの数年間横ばい状態になっている。

国民皆保険制度が始まって以来、医療費の負担割合、つまり本人、保険者、国がどのように医療費を負担するかが常に大きな問題になってきた。そしてこの数年来、国が出すべき医療費を減額する政策によって、本人負担は増大し、医療機関への診療報酬は減額されたままとなっている。医学が進歩し、高齢化が進んでいるのに、国民医療費は抑制されたままである。しかしこれでは医療の質の向上、安全性は確保できない。

この医療費問題に対し政府が考えたのが混合診療の解禁である。本年 9 月 10 日、小泉総理は混合診療解禁の支持を打ち出し、金子規制改革相らに結論を急ぐように指示をだした。この混合診療解禁は何を意味するのか、政府の説明もなければ、マスコミも黙ったままである。また 99.9% の医師も混合診療を誤解している。

現在の混合診療は差額ベッド、給食、おむつ代金など病気とは関係のない患者さんの快適性の部分に限定されている。しかし政府がたくらむ新たな混合診療とは、患者さんの快適性の部分だけではなく、患者さんの生命に直接関わる部分にも混合診療を導入しようとしているのである。つまり診察料、特殊な薬剤、特別な検査などを混合診療と称し全額患者負担をもくろんでいるのである。

小泉総理が何を考え、あるいは何をもくろんでいるかは、混合診療によって誰が儲かり、誰が損をするのかを考えれば自明の理となる。小泉総理に混合診療の推進を勧めているのは、小泉総理の直下にある総合規制改革会議である。この総合規制改革会議の議長はオリックス社長・宮内義彦で、メンバーは経済人ばかりで医療関係者は誰も入っていない。つまり「混合診療は小泉総理と宮内義彦の陰謀」と捉えることができる。小泉総理は財政赤字であるから国からの医療費支出を少なくしたいと思っている。経済界は医療で金儲けをしたいと思っている。さらにアメリカの保険業界は日本人を食い物にしようと外圧をかけている。つまり国と保険会社が儲かり、国民と患者が損をする医療システムを作ろうとしているのである。

混合診療は自動車の保険を考えてみればよく分かる。自動車の保険は強制保険と任意保険の 2 本立てで、路上を走る 2 割の自動車は任意保険には加入していない。もしこの任意保険に加入していない自動車に轢かれた場合、強制保険の部分しか遺族はもらえない。あとは個人を訴えることになるが、任意保険に加入していない者はもともと財産がないのだろうから、被害者は泣き寝入りとなる。

混合診療導入はいずれ、医療も自動車と同じように強制保険と任意保険の 2 本立てになるきっかけを意味している。高額の治療費を払うために本人は民間保険に入らざるをえない。そうなると病気を持っている人の保険料は高く、健康な人の保険料は安くなる。日本人は誰でもいずれ病気になる。そして最も困るのは国民であり患者である。

このように混合診療解禁は弱者を突き落とす政策であり、低所得者が正当な医療を受けられず、医療難民となり路頭を迷うことになるであろう。国民の生命は所得とは関係なく、日本人ひとりひとり同じはずである。国民を不幸にするような新たな混合診療の導入は絶対に許してはいけない。

国民はこの 40 年余年にわたる国民皆保険制度の恩恵を忘れ、医療に対し不満ばかりを言うが、国民の生命線ともいえる国民皆保険制度を国民の力で堅持すべきである。国民皆保険制度堅持、国民を不幸にする混合診療解禁に断固反対である。世の中には医療以外にも、政治、経済、教育など大きな問題がある。患者を治すのは医師の役割であるが、「小医は身体を治し、中医は患者を治し、大医は国と社会を治す」、この言葉を忘れてはいけない。

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