*病院経営 [#o2b97f04]

日本の病院の経営はどうでしょうか。市立病院などの公的病院の経営は 100 円儲けるのに 106 円かかっています。公的病院は補助金があるので倒産はありませんが、廃院、撤退は現に行われています。また国立病院、労災病院、社会保険病院などの公的病院も数割が廃院を予定しています。公的病院の赤字の合計は年間 1 兆 3000 億円になります。いっぽう 917 の私立病院の平均統計では、月に 134 万円の赤字、私立の精神病院も同様に月 147 万円の赤字になっています。

**公的病院経営収支調査 [#wae4f02e]

#ref(http://hcoa.jp/general/suzuki/14_1.gif)
#ref(http://hcoa.jp/png/suzuki/14_1.png)

**病院の月収支状況 ( 平成 11 年 ) [#s10f48eb]

#ref(http://hcoa.jp/general/suzuki/14_2.gif)
#ref(http://hcoa.jp/png/suzuki/14_2.png)

私立病院にも公的病院と同じ様に補助金を出すとしたら、年間 6.5 兆円が必要とされています。それだけ私立病院の経営は苦しいのです。そのためこの 10 年間で約 8% の私立病院が廃院となっています。私立病院は公的病院と同じように公的役割を担っています。補助金のない私立病院が倒産して困るのは病院職員だけではなく、周辺の住民であることを忘れないでください。

私立病院には建て替えの余裕すらありません。病院経営が良かったのは昔の話です。このように病院経営は厳しい状態にあります。しかし病院経営を良くすることは簡単なことです。医療の儲かる部分だけを行えば黒字になります。心臓、消化器、白内障などの儲かる部分に病院を特化させ、外来部門を切り離して門前診療所を作り、入院期間を短期間にすれば病院経営は黒字になります。このような方法で黒字となった病院は成功例としてもてはやされています。

しかしこのことは国民にとって良いことでしょうか。

病院へ行けば分かりますが、高齢化社会にともない患者さんの大部分は老人です。人間の身体は老化にともない、さまざまな障害を引き起こします。心臓だけだが悪い老人はまれで、さまざまな疾患を合併しています。最近流行の心臓専門病院は、中年までの患者には対応できるでしょうが、高齢化社会の実情には対応できません。高齢化社会には高齢化社会に適した医療が必要です。老人は心臓も悪ければ糖尿病もある。腰痛もあれば目も悪い。このような老人がたくさんいます。つまり高齢化社会には専門病院よりも、何でも対応できる従来型の病院が必要なのです。

しかし従来型の病院は、何でも対応するので効率が悪く赤字となります。専門病院は限られた医療しかやらないので効率がよく黒字になります。そのため専門病院が流行しているのです。

診療所の経営については 907 の診療所の平均では、1 カ月の収入が約 200 万円です。このことからマスコミは開業医の収入は一般サラリーマンの 5 倍と宣伝しています。しかし地域の医療を担う開業医の収入は次第に目減りしています。平成 14 年の診療報酬の減額により、診療所は年間約 200 万円の減収となっています。

病院は入院患者中心、診療所は外来患者中心とする医療政策を政府は打ち出しています。そして診療所の初診料を 2740 円、病院の初診料を 2550 0円と設定しています ( 自己負担はその 3 割 )。病院の診断能力が診療所より劣っているはずがないのに、病院の外来診察料は開業医より安く設定されています。

この外来診察料の設定は、病院の外来を赤字部門にして病院が外来から撤退することをねらっているのです。病院は外来患者が増えれば赤字が増えるので、病院は外来を縮小することになる。そして病院は入院患者中心、診療所は外来患者中心の医療政策が実現できるという理屈です。これは金銭による政策誘導ですが、病院は赤字であっても外来患者を断ることはできません。このジレンマの中で病院は苦悩しているのです。

また病院には、外来、救急、小児科などの赤字部門があります。しかし住民の生命を守るという任務、住民のための医療を提供する責任から、病院は不採算部門でも止めることはできないのです。このジレンマを理解してほしいのです

現在日本には病床が 160 万床あります。そして病院は慢性患者を入院させる療養病床 ( 老人病院 ) と、一般病院に区分されています。政府は患者の入院日数、患者紹介率などによって診療報酬を変え、一般病院の約半数を廃院にさせるか、老人病院に変えようとしています。しかし、そうなれば病院周辺の住民が困ることになります。

|[[目次>日本の医療を正しく理解してもらうために]]|[[前へ>日本の医療を正しく理解してもらうために/医療器機]]|14/27|[[次へ>日本の医療を正しく理解してもらうために/医療費の内訳]]|[[最後へ>日本の医療を正しく理解してもらうために/混合診療について]]|

トップ   編集 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS