*薬剤費 [#y4a31c15]

医療を支える薬剤費について説明します。日本は薬剤費のうち新薬 ( 発売から 10 年以内の薬 ) に 3.5兆円とかなりの金を掛けています。これに比べドイツは新薬には 0.4 兆円しか掛けていません。また日本はこの 20 年間に 3100 の新薬を開発していますが、画期的な薬剤はたった数種類だけです。

日本では新薬の値段は外国に比べ高くなっています。新薬の値段を高く設定するシステムは製薬会社の新薬開発を促進させますが、日本には世界に通用する新薬は数種類しかありません。古いくすりと同じ効果でありながら値段の高い新薬が多くあります。つまり日本の製薬会社は目先の利益のため、効果の少ない新薬を開発してきたのです。そのため日本の薬剤の輸入量は多く、輸出量は少なく、国境なき世界戦略で負けているのです。

2001 年度の製薬会社の決算では武田製薬が 9634 億円の売上で経営利益が 2622 億円です。この武田製薬の売り上げは 2002 年には 1 兆円をこえました。三共製薬、山之内製薬も高い売上を示しています。

このようの製薬会社は儲かっていますが、しかし製薬会社の景気がよかったのは昨日までの話であって、今後、製薬会社の業績が良くなるとは限りません。むしろ製薬会社は冬の時代を迎えると予想されます。

日本の薬剤費の総額は、この 10 年間、5 から 6 兆円前後で推移し、ほとんど変化していません。そのため国民医療費に対する薬剤費率は年々下がっています。10 数年前は、国民医療費に占める薬剤費率は 30% でした。しかし現在では 20% を切っています。製薬会社も医療費抑制政策の影響を受け薬剤費が抑制され、そのため製薬会社は斜陽産業になろうとしています。

またこの 10 年間で外資系の製薬会社が急増しました。巨大化した外資系の製薬会社は有効性の高い新薬を武器に日本市場に乗り込んできたのです。日本で使われている新薬の割合は外資系が 7 割を占め、日本の製薬会社は 3 割にすぎません。これでは日本の製薬会社の将来は暗いといわざるをえません。

**国民医療費と薬剤費比率の推移 ( % ) [#c97b8c51]

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日本の新薬の開発は 10 年間で 3 分の 1 に激減しています。新薬開発の際には、治験に協力した医師に現金が渡されていました。この金銭の授受が医師と製薬会社との癒着と非難を受け禁止されました。そのため治験に対して医師が消極的になったことが新薬開発が低迷した大きな原因と考えられます。現在、くすりの治験の説明会に行くのに、交通費も医師の持ち出しになっています。営利企業の新薬開発に医師がボランティアで協力しろと言われても、積極的にはなれません。

その点、欧米は割り切った考えをしています。治験だけでなく、医師が学会に参加するのにも製薬会社は金を出し、また治験に参加した患者にも金を出しています。大学にも多額の研究費を出し、そして新薬開発を促進し世界戦略を成功させたのです。

**研究開発費日米上位 10 社の合計 ( 億円 ) [#f7fdcd0f]

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日本の製薬会社の研究費は、10 年前はアメリカの約半分でしたが、現在は 5 分の 1 になっています。新薬開発にはバイオテクノロジー、遺伝子工学などを駆使しなければなりません。そのためには膨大な研究費がかかります。バイアグラで有名なファイザー社の研究費は日本の製薬会社上位 15 社の合計よりも多いのです。

また生命科学に関する国家予算も日本はアメリカの 8 分の 1 程度です。政府は研究費を出していると言っていますが、世界的レベルで比較するとほとんど出していないに等しいといえます。また大学と製薬会社の共同研究も進んでいません。クスリは国境なきグローバル商品です。日本の製薬会社の新薬開発が駄目になれば、日本の製薬業界が駄目になるだけでなく、日本そのものが駄目になるのです。

日本の製薬会社がこの様に駄目になったのは、かつての厚生省の「ぬるま湯的体質、護送船団方式」によって製薬業界を甘やかしたせいです。ですから世界戦略を考える欧米の製薬会社に大きな差をつけられたのです。欧米の製薬会社は世界で生き残るため、世界戦略を展開し政府も支援しています。

コカ・コーラを飲めばその特許料がアメリカに行くように、海外で開発された薬剤を使用すれば特許料が海外に行くのです。資源のない日本は、技術力で世界と競争しなければいけません。日本の貿易収支は黒字ですが、特許料の部分だけを見ると赤字です。国を豊かにするための国家的戦略を常に考えなければ、日本は知らず知らずのうちに貧乏になってしまうのです。

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